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グレゴール・シュナイダー
Gregor Schneider

Gregor Schneider

1969年、ドイツ、ライト生まれ。16歳で、自宅の部屋の中に別の部屋を作るなどして改造する作品《家 u r》の制作に着手。2001年のヴェネツィア・ビエンナーレでドイツ館代表作家となり、金獅子賞を受賞。以降、インド、コルカタの寺院前に巨大な道の門を立てたり、大きな水道管を迷路のようにはりめぐらせたりして、時空がねじれた非現実な体験を促すインスタレーションを手がける。横浜トリエンナーレ、ミュンスター彫刻プロジェクトなど、国際芸術祭の参加も多数。デュッセルドルフ芸術大学教授。ライト在住。

http://www.gregor-schneider.de  
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7つの道行き KOBE 2019

グレゴール・シュナイダーにとって極めて重要な表現手段は、既存の部屋の内側によく似た部屋を設けること、部屋や人間、物体を二重化すること、自身は入手不可能な建物を再構築することである。最もよく知られているのは、2001年にヴェネツィア・ビエンナーレのドイツ館で発表した、《家 u r》のうち24の部屋を使ったインスタレーションであろう。

30年もの間、グレゴール・シュナイダーは、社会の泣き所に触れる作品をいくつも手がけてきた。初期には作品そのものを喰い尽くすというコンセプトを掘り下げ、経済的必然性に追従する芸術に疑問を呈した。その後は、秘密にされ、清潔で、厳重に警備されたグアンタナモ湾収容キャンプの拘置所と、美術館や画廊の「ホワイトキューブ」との間に類似点を見出している。

《7つの道行き》で、来訪者は、街中に点在するシュナイダーの作品を訪ね歩くことになる。その旅の最後に辿り着くのは、腐りかけ、泥まみれになった野晒しの部屋。シュナイダーが理想とする美術館である。

「体験はあらゆる感覚を揺さぶる。それは、はかりしれない世界に拠るものなのだ。」

展示作品

(5/15現在のもので、展示作品を随時追加発表します)

アート・プロジェクト:TRANS-
1《虚構か現実か》(仮称) 2019年
《虚構か現実か》(仮称)

旧兵庫県立健康生活科学研究所

昭和43年(1968年)に兵庫県の衛生研究所として設立された地下1階、地上7階建の廃ビルを作品化した大型インスタレーション。
来場者は、感染症や食品、飲料水などのための検査室や研究室の間を彷徨い歩きながら、見えない恐怖を体感する。
古びたビルの入口に足を踏み入れた瞬間から、現実の部屋は虚構の空間にすり替わり、私たちはその両者を行き来しながらいくつもの世界を通り抜けて、また日常へと戻っていく。
シュナイダーの真骨頂が発揮された同作は、展示終了後に建物自体の取り壊しが決まっているため、TRANS- 期間の限定公開となる。

所在地
神戸市兵庫区荒田町2丁目1-29
アート・プロジェクト:TRANS-
2《浴室》2014年
メトロこうべ

メトロこうべ

高速神戸駅と新開地駅を結ぶ地下街「メトロこうべ」内に設置される《浴室》は、100メートル以上も続く地下通路とシンクロするかのように、いつ終わるとも知れない時空間を体験できる大型インスタレーション。
一日の疲れをとったり、心身をリフレッシュするために日々使う浴室も、シュナイダーの手にかかれば、よく見知った場所ではなくなる。
日常と非日常の交錯、あるいは変換。これまで誰も見たことのない光景がそこに待ち受けている。

所在地
神戸市兵庫区新開地3丁目2
アート・プロジェクト:TRANS-
3《消えゆく兵庫荘》(仮称)2019年
兵庫荘

兵庫荘

兵庫荘は、低所得の男性勤労者のための一時宿泊施設として、川崎重工業や三菱重工業の造船所の近く、港湾労働者が多く暮らす居住区に昭和25年(1950年)に開設、大勢の入居者を約70年間支援し続けた後、昨年その任を終えた。
二段ベッドが並ぶ居室、広い食堂や娯楽室、浴室などをそなえた建物は一見、学生寮のようでもあるが、唯一のプライベート空間であったベッドの上には今も日本酒の空き瓶や競馬新聞などが残されたままで、日本の高度成長期を支えた人々の素顔を垣間見せる。
シュナイダーはこの施設を一部改修し、TRANS- の来場者を出迎える仕掛けを用意する。
こちらも建物の取り壊しが決まっているため、期間限定公開となる。

所在地
神戸市兵庫区浜中町1丁目17-9
アート・プロジェクト:TRANS-
4《白の拷問》2005年〜
神戸市営地下鉄海岸線・駒ヶ林駅構内

神戸市営地下鉄海岸線・駒ヶ林駅構内

《白の拷問》は、アメリカ軍がキューバに設けたグアンタナモ湾収容キャンプ内の施設をシュナイダーが再現したインスタレーション。
米兵がテロリストと目される収監者に集団リンチを行っているというニュースが世界を駆け巡った直後、2005年のハバナ・ビエンナーレで初めて発表された。
悲惨な事件の気配を微塵も感じさせない真っ白で清潔な空間では、人や物の不在が、誰もが持ちうる死や罪、不条理に対する恐怖の感情を喚起する。

所在地
神戸市長田区庄田町4丁目

やなぎ みわ
Miwa Yanagi

やなぎ みわ

1967年、神戸市兵庫区生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。〈エレベーターガール〉や〈マイ・グランドマザーズ〉など、CGや特殊メイクを駆使した写真で、若さと老いといった女性を取り巻く諸問題への洞察を試みる。2009年、ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館の代表作家。2011年からは演劇に取り組み、『ゼロ・アワー 東京ローズ最後のテープ』を国内外で上演。2017年の「港都KOBE芸術祭」では野外劇『日輪の翼』のための移動舞台トレーラーを展示した。京都在住。

http://www.yanagimiwa.net  
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海の上での邂逅

野外劇には、歴史を経るに従ってばらばらに散逸したものを、再びひとつに戻す「力」があります。一瞬の邂逅の祝祭のあと、すべてはまた個々に戻っていきます。そして舞台に自然の力を借りるぶん自然現象に左右されます。人間の意志の力だけでは辿り着けない嵐もあれば、凪いだ夜に満月が出ることもあります。太古から人間は船を作り、海を渡り、移動し、交易をしました。水平線の彼方に思いを馳せ、真下の海に沈んだものたちの声に耳を澄ませば、過去と未来がおのずとつながります。

海の上での舞台公演は、時間と空間を超えるものになるにちがいありません。

ひとつになる祝祭と、個が各々で存在する現代美術は対極です。一見矛盾するこの往来、トランスこそが、芸術を豊かにすると信じています。

野外劇